今更抄

「今更でしょ」な話を今更

お城

 お城に冠する基礎知識が何かさえも分からないズブの素人だが、城跡や石垣には親近感がある。石垣は力強く剛健な見た目をしているが、上は意外に細くてゴツゴツしているためあんまり足場がよくないというギャップがいい。

 

 昔住んでいたところの近くには城跡があった。立派な天守閣が再建されて、なんてことをする場所でないから、石垣だけがポツンと立っている。そんな感じだ。

 あの山の上に城があったらしいと連れて行かれた時、「なんだ、何も残ったないじゃないか」と大層時間の無駄に感じていたが実に惜しいことをした。お城といえば天守閣と思っていたのだ。

 有名な戦いでもなければ有名な武将が出てくることもなく、読みやすい書物や分かりやすく語ってくれる人などのリソースへのアクセスが無かったのも痛かった。そもそも住んでいた場所について、Wikipediaを見ても「宿場として栄えたが面影はない」的な意味合いの短文で終わる程度の場所なので、そんな資料があったかは今となっては分からないが。

 ただ、あの地方に豊臣秀吉が来ていたり、関ヶ原の戦い関連で戦場になっていたりしたらしいことを知って、感じ入っている自分がいる。あの土地もそんな歴史の舞台であって、そこを生き延びた人がいたのだろうと今更ながら思いを馳せてみると、なぜか愛着が湧く。

 

 もう1つ、別の場所に住んでいた時、ここにも馴染み深い城がある。商店街と幹線道路の間に水を張った濠が現れ、本丸の石垣が島のように浮かんでいる。そして、ここはこれまた石垣くらいしか城の跡はない。この城ついての情報を見ると、どうやらある武将の設計であり、かつ力作らしい。1人の武将が、それも江戸時代に造れる城の数なんて片手で足りそうなイメージである。もしかしたら最初で最後の築城だったのかもしれない。

 そんな力作の天守閣は雷で早々に消失し、再建されることはなかったそうだが、この欠如感は趣深い。一度天守を見てみたいと思わせてくれる。そして「規模感に合ってない天守閣w」的な評価が資料として残っているらしいのもポイントが高く、それが無いからこそ私がそこを気に入った、という可能性もある。いずれにしても無いからこそ色々考えて、気に入っているのである。

 

 ツンと澄まして置かれたままの石垣も、色々と歴史があって、肌理の違いと息遣いがある。夏の暑さにふれると、今よりもっと不器用だった10代前半あたりに、部活の一環で石垣に登った時にたまたま見た夕日を思い出す。